実家に戻れば下女暮らし(後編)
シングルマザーが子連れで実家に置いてもらうこと。
家賃・食費の危機がなくなる、子育ても祖父母に協力してもらえる。
夢のような恵まれた環境ですよね。
でも、ここには罠があります。
実家住みなら保育園に入れない
よほど保育園に空きのある地域でもなければ、実家住みの人は保育園に入るのが難しくなります。保育所入所要件は「保育に欠ける」つまり世話をしてくれる人がいないことですから、「祖父母が見ることは可能ですよね?」と言われるとアウトです。
私の場合は同居でなく、近居なのに、これにひっかかりそうになりました。申請書には「祖父母の家との距離」を書く欄がありました!
おじいさんは外へ働きに、おばあさんも家で事務仕事、加えて二人とも高齢(もちろん年齢チェックが入ります)……という事実を書類にし、なんとか申請できましたが。
保育の緊急性をポイント換算して待機リストに載る順が決まるので、祖父母同居だと申請できない、またはいつまでたっても順番が回ってこないかも! シングルマザーは実家にいると、シングルマザー扱いではなくなるのです。
シングルマザーのステイタス、これは重要。
児童扶養手当は枠外になる
貧窮するひとり親は「児童扶養手当」というものが申請できます。所得によって段階があるけど、最高額なら子どもひとりの場合で月額4万円あまり。年々支給額が減り、所得制限も厳しくなっているけれど、困ったときは本当に助かります。
ここでもシングルマザーのステイタス(?)が問題になる。世帯収入で所得計算しますので、実家住みなら親の収入も(年金でも)合算されます。自分が無職でもたいてい支給の枠外になるでしょう。実家にいるけど住民票は二つの世帯に分けている、という場合でも実態優先で、ひとつの世帯とみなされます。
また、祖父母のほうでも、子が同居することでなにかの福祉の恩恵が削減されてしまう可能性があります。介護、健康保険の自己負担、高齢者支援サービス……自治体にもよりますが、そういうものが打ち切られたら、責任とって補填しろと祖父母に言われそうですねえ。節約しようと実家に帰ってきたつもりが、かえってマイナスになっちゃうかもしれません。
実家で「娘さん」ではいられない
そんなこんなを考えると、実家に戻ってひと息ついて、そのままダラダラと置いてもらうのは得策ではありません。一刻も早く、安い家賃の適当な家へ移りましょう。ちなみに、公営住宅の申込みも、実家にいると「住まいに困っている」という要件に該当せず、申し込み枠から はずれてしまう場合があるんですよね。実家にいると保育園に入れない、公営住宅に入れない、一旦入ると抜けられないタコツボとも思える状況です。
あれ? これってなにかに似てませんか?
そう。離婚したいけどダンナの経済カ圏から出られない――そんな状態と同じです。
とりあえず、まともな労働条件のまともな収入の仕事につくこと。これがいちばん重要です。時給の安い仕事を安易に続けてはいけません。
実家にいると収入が少なくても食べてはいけますけど、それでいつまで続くでしょうか? 今はこれが楽だから、と消耗品人材に甘んじててはスキルアップもないし、先で困ると思います。
実家にいるなら、そのメリットを活かしてフルで就活なり起業なりに動くのが吉でしょう。
実家に戻ったら、最初は祖父母は孫と接して喜ぶし、娘にも「まあちょっと、ゆっくりしたら」と言ってくれるかもしれません。でも、それは最初だけです。そのうち「自立できない娘」という扱いになり、「じゃあせいぜい家事雑用をしなさい」と24時間体制の下女身分に落ち着きます。孫もたまに会うと楽しいけど、毎日いるとなると、おじいちゃん・おばあちゃんだってしんどいものですよ。
うちの親はやさしいから大丈夫、という人はまあいいですけど……父母を介護して看取ったのち自分の老後までも暮らしが成り立つのであれば。今の時代、成人した子どもに援助を求めるのは酷ですから、あてにしないほうがいいと思います。
シングルマザーの品格って。
しかしながら、自分が「娘さん」をやっていては、責任をもつ親として子どもに接することができないと私は思います。子どもは祖父母が育てたというのでは、せっかくシングルになった(?)甲斐もないと思います。
私は、祖父母のおかげでご馳走が食べられたり、旅行に行けたりしたときは、
「これはじいちゃんのおかげだからね。お母さんはこんな贅沢できないからね」
と必ず子どもに伝えています。そしてふだんはきっちり節約生活をしています。
人間、分相応の生活をすべきだと思うので、できるだけ私の収入だけで暮らすようにしてきました。入学祝いだとか祖父母はいつも多めにくれてたんですけど、意地でも使わないようにして貯金してます。
子どもからは小遣いが少ないとか文句がでましたけど、親の収入が少ないんだからこんなもんでしょう、と言ってきました。
子どもにしたらいい迷惑ですね。
でも、私としてはー応自力で子どもと二人で暮らしてきた、と言えることで満足です。母に気がねなく使えるキッチンとダイニングがあり、父にもダンナにも気をつかうことなく、リビングにふんぞりかえってTVを見て、、、。
これではオヤジですね。
でも、これが私の望みどおりの暮らしです。
楽ちんなのです。